近年、多くの企業がオウンドメディアの運営に取り組んでいます。自社の強みを活かしたコンテンツを発信し、見込み客の獲得やブランディングに活用する取り組みは、もはやマーケティングの定番となっているといえるでしょう。
しかし、実際にオウンドメディアを運営してみると、思うような成果が出ないケースが数多く見られます。記事の更新が滞る、アクセスが伸びない、問い合わせにつながらないなど、オウンドメディア運用に失敗した…と様々な課題に直面している企業も少なくありません。
本記事では、オウンドメディアが失敗する典型的な原因と、それを防ぐための具体的な対策を詳しく解説していきます。これから始める方はもちろん、すでに運営している方にとっても、メディアの改善に役立つ情報が満載です。
オウンドメディアの失敗が起こる原因
ここでは、オウンドメディアが失敗する主な13の原因を詳しく解説していきます。各要因を理解することで、貴社の会社のオウンドメディア運営をより良いものにできるはずです。
明確な目的・目標設定の不足
「なんとなく始めてみた」「競合他社が始めたから」という理由でオウンドメディアを立ち上げるケースが多く見られます。目的が不明確なまま運営を始めると、方向性が定まらず、結果として更新が滞りがちになってしまいます。
成功のためには「なぜオウンドメディアを始めるのか」「どんな成果を目指すのか」を具体的に定める必要があります。例えば「認知度向上」「リード獲得」「採用強化」など、明確な目的を設定し、それに応じた具体的な目標を立てることが大切です。
KPIの未設定・数値目標の曖昧さ
目標を掲げても、その達成度を測る指標がなければ、成功したのか失敗したのかを判断できません。多くの企業で、適切なKPIの設定ができていないという課題があります。
目的に応じて、PV数、滞在時間、直帰率、CVRなど、適切なKPIを選び、具体的な目標値を設定することが重要です。「だいたい」や「およそ」といった曖昧な表現は避け、達成すべき明確な基準を設けましょう。
社内の理解・協力体制が不十分
オウンドメディアの運営には、経営層の理解と各部門の協力が欠かせません。特に記事作成において、現場の知見や専門情報が必要な場合、関係部署の協力なしでは質の高いコンテンツを生み出せません。
例えば、技術的な記事を書く際には開発部門の協力が、サービスに関する記事では営業部門の知見が必要になります。定期的な企画会議の開催や、部門横断チームの結成など、組織全体でオウンドメディアを支える体制づくりが重要といえます。
運用のための人材・予算不足
オウンドメディアの運営には、専門的な知識と経験を持つ人材が必要です。しかし、「片手間で運営できる」と考え、十分な人員や予算を確保しないケースが目立ちます。
編集長、ライター、SEO担当者、デザイナーなど、必要な役割を明確にし、それぞれの担当者を配置することが重要です。また、外部リソースの活用を含めた現実的な予算計画も欠かせません。運営体制が整っていないまま始めると、更新頻度の低下や品質の劣化を招くことになります。
ターゲットペルソナの設定が不明確
「誰に向けて」「どんな情報を」発信するのかが明確でないまま記事を作成していては、読者の心に響くコンテンツは生まれません。ターゲットとなる読者の年齢、性別、職業、課題、興味関心などを具体的に設定し、ペルソナシートとしてまとめることが大切です。
例えば「新規事業の立ち上げに悩む30代後半の経営企画担当者」のように、具体的なイメージを持って記事を書くことで、より読者のニーズに応えられる内容になります。
更新頻度・コンテンツ量の不足
記事の更新が不定期になったり、長期間更新が止まったりするケースは少なくありません。検索エンジンでの評価を高め、読者の信頼を得るためには、計画的な記事更新が欠かせません。
最低でも週1回以上の更新を目標とし、年間の記事制作計画を立てることをお勧めします。また、1記事あたりの文字数も、テーマに応じて適切な量を確保しましょう。
短すぎる記事は読者の期待に応えられず、長すぎる記事は読みにくくなってしまいます。
SEO戦略・キーワード選定の誤り
競合が多すぎるキーワードや、検索ボリュームが少なすぎるキーワードを選んでしまい、成果が出ないケースがよく見られます。効果的なSEO戦略には、以下のポイントが重要です。
- 自社の強みを活かせるキーワードの選定
- 検索意図に合わせたコンテンツ設計
- 適切な内部リンク構造の構築
- タイトルやメタディスクリプションの最適化
- モバイルフレンドリーな設計
ユーザーニーズを無視したコンテンツ制作
「書きたいことを書く」のではなく、「読者が知りたいことを書く」という視点が重要です。読者のニーズを把握するために、以下のような方法を活用しましょう。
- 検索キーワードの分析
- 競合サイトの記事調査
- 社内の問い合わせデータの活用
- SNSでの反応の確認
- 読者アンケートの実施
宣伝・自社視点の記事に偏重
商品やサービスの宣伝に偏った記事では、読者の信頼を得ることはできません。記事全体の8割は読者に価値のある情報を提供し、自社の宣伝は2割程度に抑えることを意識しましょう。
また、事例紹介や製品情報を掲載する際も、読者目線での課題解決方法や具体的なメリットを中心に説明することが大切です。
コンバージョン導線の設計不足
記事を読んでもらえても、その先のアクションにつながらなければ意味がありません。効果的なコンバージョン導線を設計するためのポイントは以下の通りです。
- 記事内容に関連する商品・サービスの自然な紹介
- 適切な位置へのCTAボタンの配置
- 関連記事への誘導
- ステップメールなど、段階的なアプローチの活用
- 問い合わせのハードルを下げる工夫
PDCAサイクルが回っていない
「記事を書いて公開する」だけでは、メディアの改善は望めません。以下のようなPDCAサイクルを確立しましょう。
Plan(計画)
コンテンツカレンダーの作成
KGIとKPIの設定
必要なリソースの確保
Do(実行)
計画に基づいた記事作成
SNSでの情報発信
メルマガ配信
Check(評価)
アクセス解析
コンバージョン率の確認
読者の反応分析
Action(改善)
分析結果に基づく改善策の検討
次期の計画への反映
運用フローの見直し
運用フローが確立されていない
効率的な運営のためには、明確な運用フローの確立が不可欠です。以下のような手順を明文化しましょう。
- 企画会議の実施方法
- 記事作成の工程と担当者
- チェック体制と承認フロー
- 公開後の評価方法
- 改善提案の仕組み
成果を求めるタイミングが早すぎる
オウンドメディアは、すぐに大きな成果が出るものではありません。早急な成果を求めすぎると、中途半端な状態で方針転換してしまったり、運営自体を断念してしまったりするケースが見られます。
少なくとも半年から1年程度は、地道な改善を続けることが大切です。その間、以下のような段階的な目標を設定しましょう。
- 第1段階:基盤づくり(3ヶ月)
- 第2段階:コンテンツの充実(3ヶ月)
- 第3段階:流入の安定化(3ヶ月)
- 第4段階:コンバージョン改善(3ヶ月)
オウンドメディアの失敗を防ぐ方法
これまで見てきた失敗の原因を踏まえ、成功へと導くための具体的な対策を紹介します。特に重要なポイントに焦点を当て、それぞれの実践方法を詳しく解説していきます。
これらの対策を実行することで、失敗のリスクを大きく減らすことができるでしょう。
明確な目標設定と数値化されたKPIの策定
成功への第一歩は、具体的な目標とKPIの設定です。目標設定では「SMART」の法則に従い、Specific(具体的)、Measurable(測定可能)、Achievable(達成可能)、Relevant(関連性)、Time-bound(期限)の5つの要素を満たすようにします。
例えば、「四半期ごとのPV増加率」「記事経由の問い合わせ数」「メールマガジン登録率」など、測定可能な指標を選び、期限を決めて目標値を設定しましょう。
適切な運用体制とリソースの確保
メディア運営に必要な人材と予算を適切に確保することが重要です。具体的には以下のような体制作りがお勧めです。
- 編集責任者の配置
- 社内ライターの育成
- 外部ライターの活用基準の策定
- 記事のチェック体制の確立
- 定例会議の実施
また、予算配分では、人件費、広告宣伝費、システム運用費などの項目をしっかりと設定し、継続的な運用が可能な体制を整えましょう。
効果的なSEO施策とCV導線の設計
検索エンジンからの自然流入を増やすため、キーワード選定とコンテンツ設計を戦略的に行います。記事構成では、ユーザーの検索意図に合わせた内容を心がけ、適切な見出し構造や内部リンクの設計を行います。
また、CVにつながる導線設計では以下のポイントに注意しましょう
SEO基盤の整備
サイト構造の最適化
内部リンクの戦略的設計
モバイル対応の徹底
ページスピードの改善
コンテンツ戦略
キーワードマッピング
コンテンツカレンダーの作成
競合分析と差別化ポイントの設定
E-E-A-T(経験、専門性、信頼性)の強化
CV導線の最適化
ユーザー動線の分析
CTAの適切な配置
フォーム設計の改善
A/Bテストの実施
長期的な運用計画と評価基準の設定
持続的な成長を実現するため、以下のような長期計画を立てます。
フェーズ別の目標設定
立ち上げ期(3ヶ月):基盤構築
成長期(3-6ヶ月):トラフィック増加
安定期(6-12ヶ月):コンバージョン最適化
発展期(12ヶ月以降):新規施策展開
評価基準の設定
定量的指標:アクセス数、CVR、ROIなど
定性的指標:記事品質、ユーザー満足度など
改善サイクルの確立
月次レビューの実施
四半期での方針見直し
年間計画の更新
オウンドメディアの失敗に関するまとめ
ここまで、オウンドメディアの失敗原因と対策について詳しく見てきました。失敗を避けるには、しっかりとした準備と計画的な運用が不可欠です。最後に、成功に向けた重要なポイントをまとめておきましょう。
- 明確な目的と測定可能な目標を設定し、定期的に進捗を確認する
- 必要な人材・予算・時間を適切に確保する
- PDCAサイクルを回し、継続的な改善を行う
これらの基本を押さえた上で、自社の状況に合わせた運用方針を定めることで、成功への近道が見えてくるはずです。オウンドメディアは、すぐに成果が出るものではありません。一定期間をかけて、地道に改善を重ねていくことが大切です。焦らず着実に、理想のメディアづくりを目指していきましょう。